質量と重量の違い
はかりとは、「質量を、物体に作用する重力を利用して計測する計量器」です。
「質量」と「重量」、似た言葉ですが、意味は異なります。質量とは、「その物体を構成している物質の量」(加速のしにくさ)であり、重量とは「その物体に作用する重力の大きさ」です。
質量はその物体が固有に持っている量なので、それがどこにあっても一定です。重力の作用する・しないにかかわらず、温度や圧力の高低、空気中/真空中/水中の違いによらず、どこにあっても一定です。質量の単位は㎏ですが、ある物体が地上にあっても宇宙空間にあっても、「1kgはあくまで1kg」ということです。
一方、地球が物体を引っ張る力(重力)の大きさであり、「質量に重力加速度gをかけたもの」です。重量は物体にもともと備わっている量ではないので、場所によって変わります。宇宙空間や月に行くと重量は変わりますし、地球上でも、はかる場所の緯度経度・高度が異なれば重量は変わります。(自転などの影響により、重力加速度が変わるため)
現在、質量そのものを直接測定する術は存在しません。そのため、はかりは物体に作用する重力を利用してその物体の質量を計測します。
質量測定の原理
では、重力をどのように「はかる」のかというと、その測定原理には様々なものがあります。
ばねはかり
「ばねはかり」では、フックの法則を利用します。フックの法則はバネの伸びと弾性限度以下の荷重は正比例するという法則で、弾性の法則とも呼ばれます。ばねに何らかの物体をぶら下げたとき、ばねの伸びをx、ばね定数(個々のバネの固有の値であり、バネの強さを表す)をkとすると、ばねにかかる力の強さFはF=kxで表されます。Fは物体の質量Mと地球の重力加速度gとの掛け算、F=Mgでも表されるので、それらの式から物体の質量を知ることができます。
ロードセル式はかり
「ロードセル式はかり」では、物体に力が加わってひずむことで発生する、抵抗変化(=電圧変化)を利用します。「電気抵抗線式はかり」とも呼ばれます。ロードセルには「ひずみゲージ」と呼ばれる電圧変化のセンサーがつけられており、重力が作用することによって発生する「ひずみ」による抵抗値の変化を、電圧変化として取り出します。
電気抵抗線式(ロードセル式)はかりの特徴
ロードセルは、「構造がシンプルで、比較的高分解能(1/20,000 程度まで)での計測が可能」「形状および大きさによって、幅広い負荷範囲に対応できる(数百g~数百t)」「小型・軽量で構造も簡単・堅牢で取扱いが容易」「荷重方向や固定方法等を様々に選択可能」などのメリットがあり、料金はかりからトラックスケールまで幅広く使われています。電気式はかりにおける最もポピュラーな測定原理であると言えます。
電磁式はかり
その他の測定原理には、「電磁式はかり」があります。電磁式では「フレミングの左手の法則」を応用します。フレミングの左手の法則では、磁石の両極の間に置かれた電線に電流を流すと、磁界及び力が発生します。この電磁力と重量を平衡させる電流の値を、質量に換算します。具体的には、測定物に働く重量と電磁力を平衡させるコイルの位置を、ハカリ内部の位置検出器が絶え間なく検出し、流れる電流を調整します。電磁力Fと電流Iが比例関係にあることから、電流Iを重量Wと置き換えて質量に換算します。
電磁式はかりは、現状の測定原理で最も高精度であり、高い精度を求められる「電子天びん」の多くが電磁式を採用しています(目安の精度は1/500,000以上の細かさ)。電磁式天びんの設置場所を移動した場合は、重力加速度の変化に対応した再校正が必要となります。そのため、簡単に校正ができるよう、校正用の内臓分銅を持つ電子天びんもあります。
音叉振動式はかり
「音叉式はかり」では、時計や楽器の音の基準になっている「金属音叉」を利用します。音叉は楽器のチューニングに使われますが、きわめて正確な音叉の振動数を利用して荷重に応じて変化する周波数を検出、重量値に変換する仕組みです。
音叉式はかりの電源を入れると、音叉振動子に取り付けられた圧電素子に電圧が加わり、あらかじめ音叉振動子を一定の周波数で振動させます。はかりの計量皿に荷重Wが加わると、伝達機構を伝わって音叉振動子をひっぱり周波数が変化するので、その変化を圧電素子によって読みとり、CPUで処理して、重量信号に変換します。音叉センサには、「消費電力が極小で、ウォーミングアップが不要」「温度変化や経年劣化に強い」などの特徴があります。
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